【初開催】BISHU FES.2023レポート

織物で彩られたまちにランウェイ!
尾州の魅力を知る2日間!

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2023年11月11日(土)・12(日)の2日間、一宮駅から本町商店街・真清田神社の区域で「BISHU FES.(尾州フェス)」が初開催されました。世界三大毛織物産地の1つとして名高い「尾州」と、その中心的存在である「一宮市」をアピールするこのイベントには、市内外から多くの方が参加。尾州の魅力いっぱいの2日間をレポートします!

一宮は“歩きたくなるまちなか”

 
一宮市は2019年にウォーカブル推進都市に認定され、2021年から居心地が良く、歩きたくなる“まちなか”の創出を目指しています。様々な社会実験の成果もあるのか、ここ最近の駅周辺イベントは、回遊しやすくて実に快適。
なんといっても、改札を出たら、目の前のコンコースからイベント会場になっているのですから、否が応でもワクワクしちゃいますよね。

この日は、尾張一宮駅前ビル(i-ビル)1階でタフティング体験、3階のテラスでは一宮モーニングや和菓子の販売などが行われていました。

駅からラウンドアバウトまでの銀座通りには、雑貨のマルシェやキッチンカーがずらりと並んでいます。うれしいことに、その脇には木製ベンチや、フォトスポットなどが各所に設置されていて、まさに“歩行者天国”。
しかも、駅から本町商店街・真清田神社がひとつのイベント空間として連動し、各所へ移動する人の流れがあるので、どこに行っても人混みによるストレスがなく、ゆったり過ごせます。

また、駅前でイベントというと通行止めで渋滞が発生して、生活者が不便になりがちですが、エリアが完全に分けられているので、そんなこともありません。一宮市のイベントは、とにかくみんなが快適に共存できるようになっているんですよ。
さあ、この日の様子をひとつずつご紹介していきましょう!


糸で描くラグアート「タフティング」に挑戦

<i-ビル1階>
◆タフティングワークショップ


「タフティング」とは、専用の道具(タフティングガン)を使って、絵を描くように、布に糸を打ち込む技法のことです。ラグやマットのあれ、です。最近ではInstagramでよく見かけるようになり、多くの人に知られるようになりました。

このワークショップを行っていたのが、奥町で染色加工業をしている小川染色株式会社さん。こちらの会社では、いまや全国でもほとんど見られなくなった、回転バック式染色機を使ったオーダー染色を行っており、糸のふくらみを最大限に引き出す昔ながらの染色に定評があります。

そんな小川染色さんが一般の方向けにタフティング体験を行うようになったきっかけは、海外で人気が出始めていた1本のタフティング動画でした。「うちには糸もたくさんあるし、多くの人に楽しんでもらえそうだ」とビビッときた安藤孝俊社長。まず頼りにしたのは、当時、福岡で別の仕事をしていた娘の依純(いずみ)さんでした。
「幼い頃から絵を描いたりものを作ったりすることが(姉妹の中でも)好きだったので、声がかかったんだと思います。ただ、軽く請け負ったものの、日本にはまだ、道具を販売しているところも、教えている人もいなかったので、海外のサイトで探して、取り寄せて、作ってみて、父に送って…というのをひたすら繰り返す毎日。仕事をしながらだったのもあって、モノにするまではちょっと大変でしたね。」

こうして独学でタフティングの技術を習得した依純さんは、一宮に戻り、家業を継ぐことを決意。2022年、満を持してワークショップを開催します。SNSでの反響は大きく、6歳から83歳までいろいろな年代の方が体験しにやってきました。
「タフティングの魅力は、だれでもすぐに楽しめること。私たちの体験教室では、とにかく糸がたくさんあるので、絵の具を使うようにカラフルな作品を作ることができます。みなさん夢中で取り組んでいらっしゃるし、体験後の満足そうな笑顔を見ると、こちらも嬉しくなりますね。」

ダダダ…と小気味よいガンの音と、それに合わせて色が出てくる面白さ。だんだんと色が入ってきてカラフルになっていく楽しさ。これはやみつきになるのもわかります。
BISHU FES.では、「138人(※イチノミヤ)で、羊柄の大きなラグを制作しよう」と企画しましたが、なんと初日の朝から大盛況。体験してみたいという人たちの行列ができ、2日間かけて作製するつもりが1日目で完成間近に。そのため、2日目のために急遽新しい柄(いちみん柄)を用意して、体験を再開し、大盛況のままワークショップを終えました。小川染色の皆さんは大変だったと思いますが、そのかいあって体験できた多くの人たちの笑顔がまた最高でした。

小川染色株式会社 タフティング体験


一宮といえば「モーニング」と「和菓子」

<i-ビル3階>
◆一宮モーニング・尾州の和菓子・尾州assembly


尾張一宮駅前ビル(i-ビル)3階はテラスになっています。朝から盛況だったのが、一宮モーニングで人気の8店舗(午前・午後各4店舗)のモーニングを500円で購入できる企画や和菓子の特設ブース。

当日の朝8時頃にはモーニング目当ての人が会場に集まり始めるといった盛況ぶり。
どの店舗もテイクアウトしやすいメニューになっており、屋外の開放的な空間で楽しむこともできるようになっています。いつもと違った楽しみ方ができる、屋外イベントならではの企画となっていました。

そんな一宮モーニングの反対側に出店していたのが、市内10店舗の特製和菓子が購入できるブース。
BISHU FES.のために開発されたというイベントロゴや「いちみん」デザインの練り切り等が、イベント限定で販売されていました。立体的な「いちみん」を目にしたお客さんからは可愛いと大評判!
その可愛さから、ついつい手に取ってしまうのも納得です。

他にも「尾州assembly〜あつまれ「尾州」自慢!〜」と称して、尾州にまつわるPRトークが聞けるステージが設けられるなど多くの方で賑わっていました。
両手に紙袋をたくさんぶらさげて帰る人たちの足取りはみな軽く、幸福感にあふれていました。

◆BISHU FES. marche

銀座通りにキッチンカーやテントが60以上も並び、尾州の生地を使った服や小物、生地や毛糸など様々なものが販売されていました。


尾州注目の若手たちがガチンコトーク!

<オリナス一宮>
◆NINOW -TEXTILE PROGRESS IN JAPAN- 尾州版


「NINOW(ニ・ナウ)」は2017年に東京・代官山で始まった“全国の繊維会社に所属する若手デザイナーたちの展示会”です。
この展示会を企画・運営しているのは、尾州を拠点に「terihaeru(テリハエル)」というブランドを展開している小島日和さん。


「この展示会を始めようと思ったのは、情熱を持って入社した若手が、心が折れてどんどん辞めてしまう業界の現状があったからです。若手の意見は一蹴され、何年も半人前、下働きとして扱われる。それを食い止めるためには、若手の才能をアピールする場を設けることが大事だと考えました。そうすることで、若手はやりたいことに挑戦でき、会社にも還元できるという良い循環を作りたかったんです。」

そんなNINOWの構想を『装苑』元編集長の片岡朋子さんに話したところ、ミナ ペルホネンの皆川明さんを紹介していただき、トントン拍子に話が進んだそう。小島さん自身は「こんな大きな話のつもりじゃなかったんですが…」と謙遜しますが、いつでも明るくおおらかで、まさに周囲を“照り映え”させることのできる小島さんの本領発揮です。

この展示会で小島さんがこだわったのは、思いを話す場を設けること。「うまくいかない現状に対して、敵対したり、諦めたりするのではなく、理解してもらうことが大事だと思うんです。実際に、会社の方が見に来られて、若手の話を涙ぐんで聞いている方もいましたし、イベント後は企画を任せてもらえるようになったり、様々な変化が生まれました。NINOWが“若手の居場所作り”になればという思いで、この活動を続けています。」

2日目に行われたトークショーは、日の出紡績株式会社の横田和磨さん、中伝毛織株式会社の吉野陽菜さん、ササキセルム株式会社の酒匂美奈さん、国島株式会社の森遥香さんが参加。多くの来場者が集まり、関係者と思われる方々はもちろん、熱心に動画を撮る学生さんの姿も見られました。
工場での仕事の様子を紹介した後、一般の方から様々な意見が出される中、「昔は確かに好景気で勢いのあった時代があり、そこを基準にして今は斜陽産業だと見られています。でも、私たちはそんな時代のことを知らないし、日本の繊維産業が低迷しているとは思っていない。私たちがずっと働ける環境を作りたい。私たちが夢中になるほど素晴らしい布たちがここにあることを、もっと知ってほしい」と語る小島さんの姿が印象的でした。

NINOWはこれまで、桐生や播州など全国の産地で行っていますが、小島さんによると「なかでも尾州は、温かくて豊かさのある地」なのだそう。「北陸に次いで生産量が多く産地として成り立っていますし、何より会社の垣根を越えた、心のつながりがあるんです。そんな産地、ほかにはないんですよ。」
これまで取材させていただいた尾州の方々の顔を思い浮かべてみると、確かにそうだと感じます。多くの若い人たちが、それぞれのやり方で、尾州を盛り上げようとするうねり。そんな若い人たちが頑張っている尾州の未来は、きっと明るいものに違いありません。
NINOW、そしてBISHU FES.が、これからも続きますようにと願わずにいられません。


手芸の楽しさを、みんなで味わう時間

◆「出張手芸部 in 尾州」

名古屋市港区で、週1回2時間、手芸好きが集まって編み物をしている「港まち手芸部」。手芸教室のように、先生が受講生に教える場所ではなく、自分の作りたいものを自分のペースで作ることを目的とした週1回の部活動です。


今回、BISHU FES.では、手芸する楽しさを提供するため、「港まち手芸部」より、発起人であり部長でもある宮田明日鹿さんを招き、オリナス一宮に2日間限定の「出張手芸部」が登場しました。
「手芸部は、手芸・編み物文化を残していく活動であり、みんなで集まってゆるやかにつながる、まちづくり活動でもあります。能動的にできる余白の創出ですね」と宮田さん。ニット・テキスタイルアーティストである宮田さんは、2018年に開催された「織り目の在りか 現代美術 in一宮」にも参加されています。この日は、提供してもらったという尾州の糸を使って、新しい作品作りを進めていました。

会場にいらっしゃったのは、はじめて編み物に挑戦した若い女性やお子さん、久しぶりに編み棒を持った女性、普段から趣味で編み物を楽しんでいる男性など、年齢も性別も経験も全く違う人たち。指や編み針、編み棒を使い、繰り返しのリズムで手を動かしていると、「あっ、ここどうやるんだったかな」「それはこうすればできますよ」なんて、自然と会話が生まれます。あるいは言葉を発しなくても、向かい合ってただ編み物をしているというだけで、不思議と心穏やかになったりします。

宮田さんが立ち上げた手芸部は、名古屋市港区、緑区有松、金沢市金石、広島市、鳥取県にあるそうですが、この日の様子を見ながら「一宮市にもできたらいいのに!」と思いました。


目玉は史上最大級のファッションフェスタとのコラボレーション!

「日本のガールズカルチャーを世界へ」をテーマに2005年8月から年2回開催している史上最大級のファッションフェスタ「東京ガールズコレクション(TGC)」。

©マイナビ TGC 2023 A/W

そのTGCが2015年に立ち上げた地方創生プロジェクトの一環として、一宮市が中心的存在となっている毛織物産地「尾州」とコラボレーションしたイベント「BISHU COLLECTION produced by TGC」を開催。
TGC史上初となる“神社”、そして“アーケード街”(一宮市本町商店街)を舞台に、TGCプロデュースの唯一無二のサステナブルなファッションの祭典となりました。

多くの人が驚愕し、開催を楽しみにしていた「BISHU COLLECTION produced by TGC」。
BISHU FES.とのコラボレーションイベントとして、2日間を通して様々なイベントが開催されました。

未来のデザイナーたちによるステージ

<本町商店街>

この日の本町商店街は、いつもとは違った雰囲気。一宮市の最大のイベントが七夕まつりですが、あの見慣れた七夕飾りがなんと尾州の布で装飾されています。

今回、真清田神社や本町商店街の装飾を担当されたのはアーティスト五十嵐 LINDA 渉さん。尾州の繊維企業より提供されたハギレを使ってアップサイクルされており、商店街も衣装をまとったような雰囲気に。見た目のあたたかさもあり、ちょっと寒くなってきた頃のイベントにぴったりです。

1日目に行われた「BISHU collection produced by TGC Street Runway」のイベント時には、長さ40mのランウェイが登場。様々な布を縫い合わせて作られていて、ショーの参加者たちから「カラフルでかわいいランウェイでテンションがあがりました」との声も。

ファッションショーには、ランウェイを制作した修文学院高校の学生さんをはじめ、一宮高校、服飾専門学校ドレスメーカー学院の学生さんが参加。尾州の生地をふんだんに使った服も見応えがあり、沿道からは多くの声援が飛んでいました。

未来のクリエイターを巻き込んだ教育の場としても活用されており、さすがTGCと言わざるを得ません。
(それにしても40mのランウェイを一体どうやって作ったのか、、、今の高校生は素晴らしい技術を持っているようです。)

史上初!ALL尾州のファッションショー

<真清田神社>
◆BISHU COLLECTION produced by TGC


辺りが暗くなりはじめた頃、多くの人が真清田神社へと歩を進めはじめました。
誰もが楽しみにしていた「尾州」とTGCのコラボレーションイベントの開催がいよいよ迫ってきました!

会場に着くと、TGC史上初となる“神社”での開催ということで、イメージしていたファッションショーとは違った厳かな雰囲気。待っているだけで緊張してしまいます。

開演の時間を待つこと数十分。遂に時間となり、待ち遠しかったショーが始まるかと思いきや、まさかのご祈祷からスタート。これも神社ならでは演出で期待が高まります。

写真/©BISHU COLLECTION produced by TGC

ファッションショーは新進気鋭のファッションブランド「KEISUKEYOSHIDA」と一宮地場産業ファッションデザインセンター(FDC)が開催している翔工房出身で装苑賞を受賞された大下彩楓さんのルックからスタート。
お笑いライブやアーティストライブもありながら、尾州の魅力が詰まった、あっという間の2時間となりました。

「新見本工場(尾州のカレント)」や「尾州ロリィタ」といった、産地の最前線に立つブランドのショーは、とりわけ多くの方を魅了したことでしょう。

新見本工場(尾州のカレント)についてはこちらもチェック!
>> びしゅうは、楽しい。「尾州のカレント」の物語。

©BISHU COLLECTION produced by TGC

BISHU COLLECTUION produced by TGCは、モデルさんの衣装から舞台となるランウェイまで全てが尾州産という徹底ぶり。

本町商店街のランウェイと同様、真清田神社のランウェイも地元の学校と協力して制作。担当した一宮高校の学生さんにとっても忘れられないイベントとなったに違いありません。

ショーの詳細についてはこちらもチェック!
>>【BISHU COLLECTION produced by TGC】愛知県出身の岡崎紗絵がトップバッターを飾る!17歳の車いすテニス世界王者・一宮市出身の小田凱人選手が尾州を纏って登場!

  • ©BISHU COLLECTION produced by TGC

2日目の本町商店街では、BISHU FES.ファッショニスタコンテストが行われ、100組近い応募の中から選ばれた18組の参加者が、自慢のファッションでウォーキング。特別な世界のように思っていたファッションショーを目の前で見ることができ、ファッションを楽しむことの喜びに触れたような気がしました。

また1日目のランウェイでモデルさんが着用された衣装の展示も行われ、尾州生地の艶やデザイン性、服の精巧さを目の当たりにすることができました。

尾州の魅力を伝えるBISHU FES.。日本最大の毛織物産地「尾州」にある一宮だからできるイベントとして、七夕まつりに匹敵するような大きな祭典に育っていくことを期待しています!

イベント情報のほか、会場マップ等は公式ウェブサイトもしくはパンフレットからご確認ください。

BISHU FES. 公式ウェブサイト

パンフレット(会場配布)

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