2025年11月8日(土)・9日(日)の2日間にわたって開催された「BISHU FES.」は、一宮市が誇る毛織物産地・尾州(びしゅう)の繊維・ものづくり文化を、来場者が全身で楽しめる体験型イベントです。単なる展示や物販にとどまらず、「見て、触れて、味わって」楽しめるコンテンツが凝縮され、終日会場は大いに盛り上がりました。あなたもきっと参加したくなる、その熱気をレポートします!
目次
尾州の技術を体感! 「自分で作る」喜びに夢中
「BISHU FES.」は、「尾州を見て、触れて、購入してもらう」ことを目的としたイベントで、そこにファッション・食・アートもドッキングして盛大に「尾州」の魅力をPRする特別な2日間。おしゃれな秋の催しに、お出かけ気分が高まります。
さて、一宮駅の改札を出た瞬間からすでにはじまっている「BISHU FES.」。この尾州の技術に触れるワークショップは、子どもから大人まで大人気。ものづくりへの好奇心が刺激されます。
タフティングワークショップ:流行のクラフトに挑戦!
一宮の玄関口である尾張一宮駅前ビル(i-ビル)1階コンコースで行われたのは、小川染色株式会社によるタフティングワークショップ。タフティングとは、専用のタフティングガンという道具で立ったまま布に毛糸を打ち込んでいく、近年SNSで話題のクラフトワークです。
このタフティング、ダダダ…とガンで打ち込む姿がダイナミックでカッコいい、ということもあり、メカ好きそうな男性方も興味津々。どうやらこの独特の感覚は、没頭感があり、デジタルデトックスにもなるとのこと。
図柄は、打ち込んだ側とは反対に出るため、どのように打ち込まれるかを見ているのも結構楽しいですよ。
難しそうに見えますが、マーカーで色をつけるように、まっすぐ色を置いていくだけなので、小学生でもとても上手に操っています。できあがった後「ここの部分、自分でやったところなんだよ」と愛おしそうになでる姿が印象的。きっと素敵な思い出となったことでしょう!
小川染色さんがこのような「タフティンワークショップ」をはじめたのは、2022年のこと。当時はまだ海外のSNSで見かける程度でしたが、機材を海外から取り寄せて、国内でいち早く始めました。
今年は、2026年アジア・アジアパラ競技大会のバドミントン会場となることにちなみ、「いちみんとひつじがバドミントンをする」特別なデザインを2日間かけて大きなタペストリーにする企画が行われ、多くの方が参加してくれました。
「ふわふわマグネット」
さらに、10㎝四方のモフモフとしたかわいいマグネット「ふわふわマグネット」(材料費1,000円)制作体験も登場。
手軽に尾州のものづくりを楽しめるコンテンツとして、子どもたちにも大人気でした。
編み物ワークショップ:独学からステップアップ!
編み物ブームを追い風に企画された編み物ワークショップは、編み物初体験という女性たちが続々と参加。参加費無料で、編み物講師から丁寧に教えてもらえるとあって人気コンテンツとなっていました。
参加者からは「編物に興味があったけど、何から始めていいかわからなかった。やってみたらすごく楽しくて、ハマりそうです!」という声や「普段はYoutubeを見ながら独学で編んでいるけど、わからなかった細かい部分を先生に教えてもらえてよかった」など、喜びの声が多く聞かれました。
このワークショップのもうひとつの魅力は、各企業から提供された、シルク入りなど高級で珍しい毛糸が1玉100円という破格で販売されていたこと。手芸好きが競うように購入し、尾州のものづくりに触れる良い機会となっていました。穴場です!
尾州らしさが凝縮! こだわりが光るマーケット
一宮駅直結のi-ビルでは、この日、エスカレーター上の吹き抜け空間に突如として50着のパンツが現れました。
この光景を目にしたとき、尾州のカレントメンバーであり、新見本工場の川尻店長の言葉を思い出しました。
「デニムの街・倉敷市児島では、駅に降り立った瞬間からその世界観が広がっている。尾張一宮駅も、尾州の生地が出迎えてくれるまちになったらいいな」と。
エスカレーター上に尾州らしい服がずらりと並ぶこの景色は、まさにその言葉どおり、私たちに見せたいと願ってきた“彼らの夢”が形になった瞬間だったように思います。
びしゅう産地の文化祭:産地を愛する若手が作る潮流
i-ビル3階シビックテラスは、「びしゅう産地の文化祭」の熱気に包まれていました。
これは、地域の繊維産業を盛り上げるクリエイター集団「尾州のカレント」が中心となって運営するマルシェ。
2019年から続くイベントで、今では出店者もお客さんも顔なじみが多く、温かい空気感が会場に満ちています。
会場には、もっちり食感のイーストドーナツ専門店「gulu gulu donut(グルグルドーナツ)」、スノーボーダーのオーナーが自身のライフスタイルに落とし込んだプロダクトを展開する「Transition Equipment(トランジション エキップメント)」、季節の装いに合う色や素材のアクセサリーを扱う「galleggiare(ガレジャーレ)」など、尾州の地で活動する“こだわり派”の企業・店・個人が集結。
特に「この靴下、一度履いたら手放せない!」と知り合いの誰もが口をそろえて言う「Transition Equipment」の靴下「StockSock」をここでついに購入。わくわくして履いてみると…ホントその通り。足裏がパイル、甲がメッシュになっていて、ズレずにぴったり、肌触りもよく、最高の履き心地で、すっかりお気に入りになりました。そして、地方の仕事関係者に会う時の手土産にいつも頭を悩ませていたのですが、実は一番喜ばれたのもコレ。いまでは、気軽に渡せる手土産の定番になっています。
会場には、松永株式会社の吉村宣孝さんの姿も。1906年創業の学生服・子供服の縫製工場で、尾州のカレントでは副代表を務め、「びしゅうのスカート」のパターンや製造を行ったり、イベントにも積極的に参加したりと、尾州産地への想いの強い職人さんです。
そんな吉村さんに、尾州はどう変わってきているかと聞いてみると、「年々手ごたえがある」との言葉。というのも発足当初、「びしゅう産地の文化祭」といっても、地元の人にすら「尾州ってなに?」と聞かれるほど認知度は高くなかったそうです。それでも地道な活動を重ね、少しずつファンを増やし、今では「産地に服を買いに来てもらう」ムーブメントをけん引する存在へと育ってきました。
尾州で働く生地メーカーや縫製会社などの若手が、職場を越え、市民として・個人として企画を形にしていること。その積み重ねが、尾州の新しい潮流になっていることこそ、このイベント最大の魅力だと、あらためて感じました。
絶品! 地産地消グルメとクラフトビールに舌鼓
ものづくりの熱気とともに、胃袋も満たしてくれるグルメエリアも大盛況でした。駅からロータリーまで続く直線エリアには、多彩なキッチンカーやフードブースが並び、歩行者天国さながらの賑やかな雰囲気に。
フードマルシェ:三八屋クラフトビールで発酵させたピザ!
“一宮的グルメ”を楽しむなら、石窯ピザの「boccano(ぼっけーの)」は外せません。
愛知県産小麦を使用し、酵母の代わりに三八屋のクラフトビールでゆっくり発酵させた生地は、ほんのり甘く、もっちりとした食感。
キッチンカーに設置された石窯でこんがり焼き上げられた本格ピザをひと口頬ばれば、思わず「ボォーノ!」と声を上げたくなるおいしさです。
クラフトビアパーティ:市民パワーが支える熱狂
本町商店街では、クラフトビアパーティが同時開催されていました。
地元一宮のクラフトビールも意外に多くてびっくり。試飲と称して、いざ参戦。地元酒店ハヤシヤが運営する「尾州ブルーイング」の「ウールとエール RedIPA」(800円)は、香り高く、のどごしもしっかり。
一宮クラフトビールの草分け的存在といえば「一宮ブルワリー」。三八屋の珈琲を使った「珈琲スタウト」は、ギネスを思わせるボディ感と豊かなコーヒーの風味で、クラフトビールファンを魅了していました。
これだけの規模の事業者を巻き込み、イベントを長年継続し、しかも市民団体が主体となって運営している―その事実は、一宮の“市民パワー”の強さを物語っています。
音楽で彩られた「BISHU Concert」
オリナス一宮で行われた「BISHU Concert」では、2日間で全6団体が演奏を披露しました。いずれも地域で精力的に活動する、人気・実力ともに折り紙付きのグループばかりです。
取材時には、実力派オカリナ四重奏「ボーネ・アミーケ」がトップバッターとして登場。オカリナの素朴な音色が、4人のアンサンブルによって、やさしく、そして深みのある音楽へと変化していきます。会場に集まった多くの人が足を止め、その透き通った音色に聴き入っていました。こうしてオリナス一宮では、2日間を通してさまざまなコンサートが行われ、ものづくりの熱気と音楽が響き合う、心地よい時間が流れていました。
未来が生まれる瞬間を目撃! 「BISHU FES.×TGC」
i-ビル7階 シビックホールでは、BISHU FES.×TGC「新規デザイナー発掘プロジェクト」の最終審査会が開催されました。
このプロジェクトは、尾州における将来のビジネスパートナーの創出やファッション業界を担うデザイナーの発掘や育成を目的としたファッションコンテスト。「紡ぐ、繋ぐ」をテーマに、デザイン画による一次審査から「Samsung Galaxy presents TGC in あいち・なごや 2026」への出場を一連のストーリーとする一大プロジェクトです。
TGCとのコラボは、2023年、真清田神社と本町商店街を舞台に行われた『BISHU COLLECTION produced by TGC』が最初。来場者数はのべ約1,300人、約49,500人がライブ配信を視聴するなど、ファッション業界内外から高い注目を浴びました。
だからこそ、このイベントには、学生デザイナーにとって大きな意味があります。
ランウェイでは、尾州の誇る良質な素材が、想像を超える新しいデザインに昇華。
美しく、カッコよく、そして面白い、魅力的な作品が次々と登場し、会場の誰もがそのフレッシュな感性に目を奪われました。
グランプリは、坂本音々さん(大阪文化服装学院)の作品「Like a horse」
審査員からも「見た瞬間に心を奪われるインパクトがある」と評価されました。
「自分の作品に込めた思いが伝わるか不安だったので、まさかグランプリを受賞するとは思いませんでした。前日のフィッティングで思ったようなシルエットになっておらず、朝まで修正していたので、(発表されたときは)頑張ったなって、やりきった感がありました。」(坂本さん)
準グランプリは、佐野正貴さん(名古屋モード学園)の作品「Looming Collage」
TGCのランウェイでの映えや、アップサイクルで新たな価値を生み出す力も含め、総合的に優れた作品だと評価されました。
「地元の一宮市が主催するコンテストで準グランプリをいただけてすごい嬉しいです。地元だからこそ、見知っているものしか見えなくなったりするため、他の出場者の表現や魅力の感じ方が作品に表れていて新たな学び・発見にもなりました。」(佐野さん)
優秀賞は、水野果恋さん(岐阜女子大学)の作品「今を生きる」
「とても大変な作業で、何回も諦めかけました。周囲の協力もあって、自分の力を出し切った作品で受賞できたことはとても嬉しかったです。着せた状態で制作していたため、モデルさんが着用しているのを見て感動したし、まさか受賞するとは思っていなかったです。」(水野さん)
TGC賞
4人の審査員は、口々に「とにかくどれも素晴らしくて、最後の最後まで決められなかった。こんなレベルの高いショーはない」と絶賛。順位をつけられないという異例の事態から、急遽TGC賞という賞が設けられました。
村田美翔さん(大阪文化服装学院)の作品「Crow」
竹松咲音さん(文化服装学院)の作品「紡みくじ」
「コンテストは、デザインの良し悪しではなく、趣旨を上手く汲み取った作品が受賞すると思っていたので、自分の作品は頑張って制作したものの、このコンテストで受賞する作品ではないと思っていました。今後は、生地の生産者に話を聞き、生地を使用した意味を消費者に伝えられるデザイナーになりたいです。」(村田さん)
「TGCコラボという凄く大きなイベントの一つで、このような賞をいただけて嬉しいです。制作にあたって、成長した点も反省点もあるため、今後の制作に活かしていきたいです。普段は会えないプロの方が一体一体向き合って講評してくれたため、自分の作品以外の講評も含めて凄く勉強になりました。」(竹松さん)
TGC賞の2作品は、今後どこかで開催されるTGCで披露されるとのこと。
いつ・どこで披露されるのか、夢が広がってワクワクしてしまいます。
確かに、素人目から見ても、尾州という素材や背景と向き合って作られたことを感じさせる、フレッシュな新人デザイナーたちの斬新なアイデアと真摯なものづくりにワクワク!
日本のファッションの未来が生まれる瞬間を目撃できた貴重な体験となりました。
★まとめ
「BISHU FES.」は、伝統ある尾州の繊維産業と、新しい世代のクリエイティビティが交差する、一宮市の象徴的なイベントへ進化。特に、運営を手伝う学生サポーターや、イベントを支える多くの人の姿は、まちにとっての誇りといえるでしょう。市民パワーが一宮の魅力であることを強く感じさせました。
ワークショップで技術に触れ、マーケットで品物を手に入れ、グルメを味わい、そしてTGCプロジェクトで未来を垣間見る。 尾州のものづくり文化を五感で体験することの喜びを改めて感じさせてくれる「BISHU FES.」。
来年も開催されるんでしょうか? 今から楽しみです!





























