ゴールデンウィークの風物詩「第22回 杜の宮市」が2024年5月4日(土)に行われました。杜の宮市は、2001年より毎年1回開催されているクラフトフェアです。約4万人が引き寄せられる人気の秘密とは?実際にでかけて探ってきました!
目次
手づくり文化を支える「杜の宮市」
杜の宮市は、毎年5月のゴールデンウィークに行われている1日限りのイベントです。真清田神社周辺において、手作りのクラフト、音楽、フードを広げ、育てる文化を創造するという形は2001年の開始時と変わらず、2024年で22回目を迎えました。
今回の特集では「杜の宮市」の魅力と成り立ちをご紹介いたします。
出店者・来場者に聞いた「杜の宮市の魅力とは」
杜の宮市は、神社境内から本町通4丁目までの5つのエリアに分かれています。まずは出店者や来場者の方に、その魅力をお聞きしました。
A 真清田神社境内エリア
「138のモノづくり」「池前横丁」
真清田神社の境内にひしめき合うように
お隣の町・稲沢市で、キルンワークという電気窯でガラスを溶かす技法を使ってガラス製品を作っている「glass works tre」さんによると、杜の宮市は、作り手にとって憧れの場所になっているのだそう。この日は、仕事休みのご家族もお手伝い。多くの出店者が家族で参加されていて、まさにアットホームな雰囲気があります。
春日井市で一点ものの陶器アクセサリーを制作する「ゴトウユカリ」さん。「このイベントは集客がすごいと関係者の間で評判なんですよ。実際に来てみると、神社の清らかな雰囲気が素敵で特別感があり、とても気に入りました。毎年楽しみにしてくる方が多く、地元に愛されているイベントなんだなと思います。」
クラフト系マルシェは特にそうですが、作家さん自身もお客さんとの交流を楽しみにしています。これが制作の励みになるから。だから、買う・買わないは二の次として、作家さんのこだわりや想いをぜひ聞いてほしいですね。
そうなんです、これが他のマルシェとは違うところ。なんと杜の宮市では、事前に審査があり、「381 artist(ミヤイチ・アーティスト)」として認定された方だけが出店できるのです。これは、年度ごとに外部の専門審査員(数年で交代)が「手づくり」「オリジナリティ」「クオリティ」を重要ポイントとして採点しているとか。1,000以上の応募者から約380に絞られるそうですから、ベテランとはいえ毎年通るとは限りません。しかしこの認定こそが、杜の宮市の品質を守り、ブランドを支える土台となっているのです。
B 宮前三八市広場エリア
「素材やマーケット」「宮前マーケット」
大きな鳥居の前で出迎えてくれるのは、ビッグバンドあり、サンバあり、弾き語りありの「なまおとライブ」。ここだけでなく大小6つのステージに35組が参加。ステージ前には休憩所も設けられているので、座って見られるのもうれしいです。尾州の布や糸など珍しい素材も驚きの価格で販売されていました。
C 本町通1丁目エリア
「ヒロガルソーシャル」「けんしょうランド」
杜の宮市ならではの企画といえば「ヒロガルソーシャル」。市民の手で始まった宮市だからこそ、このブースは地域社会の架け橋として重要な役割を担っています。2014年に「市民活動大集合!」としてスタートし、2015年に現在の名前に変更された「ヒロガルソーシャル」では、ソーシャルビジネスや市民活動団体による様々な取り組みが紹介されています。
今回「ヒロガルソーシャル」で出会ったのは、一宮市内のコミュニティスペース「hauska Paikka(ハウスカパイッカ)」さん。羊毛お絵描きコースターワークショップや糸つむぎを通して、羊毛の温もりを感じることができました。刈り取る前の羊毛に触れ、それが糸に変わっていく様子を目の当たりにすることで、ウールへの愛着がわいてきますね。
その他にも、FMいちのみやさん、市民活動支援センターさん、コープあいちさんなど、地域貢献をしている団体が楽しいイベントを行っていました。
D 本町通2丁目エリア
「おかしや参道」「葵にぎわい広場」「モチカエリア」
「普段は大須、東別院の朝市などに出店していて、杜の宮市は3度目ぐらい。東別院では年齢層も同じくらいだし、いつも見かける顔が多いのですが、杜の宮市は一宮市民全員来ているんじゃないかっていうほど人が多いですね。老若男女、オールターゲットなのが、出店者としては面白いところです。」
新しい出会いにワクワクする、そんな刺激的なイベントなんですね。
E 本町通3・4丁目エリア
「はんじょうアート」「杜の学校」
糸つむぎ体験をする小学生の娘さん。その姿を見守るお父さんに声をかけてみました。
「大垣市から来ました。杜の宮市は毎年楽しみにしていて、本町通りは多くの体験ブースがあるので、子どもたちは大喜びです。似たようなマルシェやイベントはありますが、こんなに質が高くて、規模が大きくて、面白いものはないんじゃないかな。」
「Yukkiiのカリンバ教室」のゆっきーさんは、将来カリンバカフェを開業したいという夢をもっています。「カリンバという楽器が好きで、働きながらカリンバの魅力を伝える活動をしています。今日は、みんなに知ってもらうために、ペンダントにもなる小さなカリンバを作って持ってきました。多くの人と交流しながら、はじめての杜の宮市を楽しんでいます。」
杜の宮市の精神性と思われるのが、優れた作家だけでなく、新人作家のバックアップも行っているところです。本町商店街エリアでは、他では見られないユニークな商品を手掛けているニューフェイスたちに出会えるのが魅力ですね。
【ゆっきー様に画像確認】
一宮ではチンドン屋さん日本一を決めるコンクールも開催されているので地元の人は見慣れた光景かもしれません。
杜の宮市のはじまり
一宮市の手づくり文化と賑わいが詰まった「杜の宮市」。
この魅力があふれる1日がどのようにはじまったのか、深堀してみましょう。
「三八市」の賑わいを再び
一宮市のシンボルといえば、尾張国の一宮である真清田神社。江戸時代には、その門前に尾張藩認可の「三八市」(月に6回開かれる定期市)が開かれ、たいへんな賑わいだったそうです。その活気は繊維街が形成された昭和の時代まで続きました。
その後、繊維産業の縮小やクルマ社会の到来で、門前から人の流れが減少。すっかり寂しくなってしまいましたが、往時の活気を取り戻すため、行政に頼らない市民主体の自主活動をする団体がありました。
以前『熱い男たちの物語~小さな醸造所「一宮ブルワリー」ができるまで』という記事内で紹介させていただいた星野博さんは、これら地域づくり団体の中心人物であり、杜の宮市のキーマンとなった方です。
【星野さん画像確認】
“志”民の手で誕生したイベント「杜の宮市」
杜の宮市は、「神社境内から広域へ、市民による文化発信ができないか?」という真清田神社の飯田宮司(故人)から星野さんへの相談がきっかけではじまったイベントです。
志ある市民の力でまちを盛り上げたいという思いは、皆同じ。「志民連いちのみや」「まち遊び総研」など市民活動団体のメンバーが主体となり「杜の宮市準備委員会」が立ち上がり、2001年に真清田神社境内にて記念すべき第1回の杜の宮市がスタートしたのです。
【第1回画像 杜の宮市主催者に確認】
“私たちのイベント”に育てていく醍醐味
この度行われた第22回杜の宮市では、オリナス一宮にて企画展示「宮市メモリー2001-2024」が開催されました。当時の様子を写真で伝える「フォトブース」やオリジナル手ぬぐい、Tシャツなどを展示した「宮市グッズブース」からは、多くの人たちの力で動かし進化してきた22年の重みを感じます。
「歴代のフライヤーを見ると、当時の想いが蘇ってきますね。今でこそこんなに大規模になり、イベントとして多くの方に認知されるようになりましたが、長い間、人が集まらない時期が続き、やりくりが大変でした。協賛も少なくて資金も集まらず、人手も備品も、何もかも足りない中、スタッフたちのがんばりで、なんとかやってきた感じです。」
そんな杜の宮市ですが、爆発的に人が増えたきっかけが2度あったとか。東日本大震災、そしてコロナ禍。自粛ムードが世の中に広がる中、多くの人たちが求めたのが、開放的な屋外で行う、交流型のマルシェだったのでしょう。
「新型コロナウイルス感染症が広がりはじめた頃、他のイベントは実施の可否判断を様子見している状態でしたが、代表(星野さん)はすぐに中止にしました。第20回という節目でしたし、駅前まで広げて大々的なイベントをする予定でしたが、判断は早かった。さらに中止しただけでなく、今度はその秋に、人を分散させて、ゼロ密を目指したイベント“まちの宮市”をスタートさせました。その判断力やスピード感はさすがだと思いますし、これによってイベントに対する信頼性も高まったと思います。」
約380もの出展者をまとめ、150人近くのスタッフを動かし、4万人を集める運営者はプロの業者でもそうそういません。それを成し遂げ、年々進化し続けている杜の宮市のすごさ、いやその中の人たちである“志”民パワーを思い知らされます。「私たちのイベント」として地域の人が考え、動かし、育て、つないでいく仕組みこそ、まちの財産として誇れるもの。杜の宮市が、他のイベントと一線を画しているのもうなずけますね。
今回多くの方とお話して、あらためて杜の宮市の魅力に気づかされました。にぎわいをつくるという地域活性としても、自立した市民そしてアーティストを育てるという教育・文化的な意味合いとしても、単純に楽しいイベントとしても、素晴らしい、の一言。また来年、楽しみにしています!
杜の宮市
住所 | 真清田神社、宮前三八市広場、一宮市本町商店街、葵公園ほか |
---|---|
営業時間 | 10:00~16:00 |