昔、三ツ井の北から平島にかけての土地は、昼なお暗いほど一面に大松、小松が茂り、その真ん中は深い渕になって二筋の大きな川が流れ、気味悪い島を形作っていたということです。

 ある冬の寒い夜、里の若者が大勢お宮にお籠りをしていたことがありました。よもやま話に笑い興じた末、その島へ百燈をつける肝試しをやる相談がまとまりました。一人ずつおそるおそる出かけて行き、九十九人まではかろうじて無事に終わりました。しかし最後の一人は出て行ったきりで、いつまで待っても帰ってきません。一同は、もしや事によったらと思うと気が気でありません。あぐらをかいて筵の上で心配している内に夜が白みかけてきました。勇気を出して一同そろって島へ探しに行くと、びっくり仰天、青ざめて声も出ません。燈明の下に八つ裂きになった若者の死骸が二た目と見られぬむごたらしい姿で横たわっていたのです。それから誰言うとなくこの島には鬼が住んでいる「鬼ヶ島だ」と言うようになりました。

 三ツ井から平島へ行く青木川に沿い三ツ井、重吉の四字の集まった所には、いずれも鬼ヶ島という字名が今も残っています。