昔々大昔、三ツ井重吉の里は、北から東にかけてこんもりとした森におおわれ、南から西へは一面見渡す限りよく開けた野原でした。その頃、いつも時を違えることなく暁になると遠い東の畑で金のチャボが美しい声を高らかに上げて鳴きました。この声を聞いた者は、巨万の富みを得て長者になれると誰いうことなく言いだしました。そこで里の人々は、一度は自分も美しい声を聴こう、珍しい不思議な鳥を見届けよう、できればわが物にしようと日の出前からその方向を目指して出かけました。幾度試みてもその声を聴き、その正体を見届けた者はありません。

 しかし、この不思議な話がきっかけとなり、里の人々は朝早くから仕事に取り掛かるようになり、自然と金持ちが多くなったといいます。チャボの住んだという土地は、重吉の東南方にあり、一坪位の畑地が小高く盛り上がり、雪が降ってもそこだけは早く乾いたといわれていました。

 この話は明治時代の小学校の読本に載せてあったスペインの寓話「白い雀」によく似ています。